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2026-06-01
お役立ちコラム

「ご!」と言ったらどう返す?

「ご!」と言ったらどう返す?

― 子どものおしゃべりを広げる「魔法のオウム返し」と関わりのコツ ―

前回のコラムでは、お子さまが「りんご」を「ご!」と言うように、“語尾だけを話す”背景には、お口の運動発達や記憶のメカニズムが関係しているというお話をしました。 「語尾だけなのは、一生懸命伝えようとしている自然な姿」だと分かっても、いざ目の前で我が子が「ご!」と言ったとき、どのように返してあげるのが一番良いのでしょうか。

今回は、臨床発達や言語療法の現場でも実際に使われている、子どものことばを豊かに育むための「具体的な関わりのコツ」を分かりやすくお伝えします。

 
言葉を「プラス」して返す

  子どもが「ご!」と言ったとき、ただ「ご、だね」と返すだけでは、正しい言葉のモデルが伝わりません。また、「違うよ、りんご!」と厳しく訂正すると、話す意欲を削いでしまうことは前回お伝えした通りです。

専門的には、これを解決するアプローチを「拡充模倣(かくじゅうもほう)」や「拡張(リキャスト)」と呼びます。

やり方はとてもシンプルです。 子どもが言った言葉を優しく受け止め、そこに「正しい音」や「新しい言葉」を少しだけプラスして返してあげます。

子ども:「ご!」(りんごを指さして)
保護者:「そうだね、りんごだね。赤いね」

このように返すと、子どもは「自分の気持ちが伝わった!」という安心感を得られると同時に、頭の中で「自分が言った『ご』は、大人の世界では『りんご』と言うんだ」「『赤い』という特徴もあるんだ」と、自然に言葉をアップデートしていくことができます。
 

「話すスピード」を子どものテンポに合わせる
 大人が普段話しているスピードは、言葉を覚え始めた子どもにとっては「新幹線」のように速く感じられます。脳の処理が追いつかないため、言葉の最初が聞き取れず、結果として語尾だけが耳に残る一因とも考えられます。

 ことばの発達を促すエビデンスとして効果的なのが、「スロー&クリア(ゆっくり、はっきりと)」話しかけることです。

「ほら、りんごがあるよ!」(通常のスピード)
「あ、り・ん・ご があるね」(意識して間をあける)

少し間をあけ、口元を見せるようにゆっくり話しかけることで、子どもは言葉の「頭の音(り・ん)」をキャッチしやすくなります。

 
ジェスチャーや本物をセットにする
子どもは、耳から聴く音(聴覚情報)だけでなく、目で見る情報(視覚情報)を組み合わせることで、言葉の意味をより深く理解します。

「りんご」と言葉だけで教えるよりも、

本物のりんごを見せる
絵本のイラストを指さす
食べる真似(もぐもぐ)のジェスチャーをする といった「マルチモーダル(複数の感覚を使う)な刺激」が、視覚情報や動作が加わることで、子どもは言葉と意味を結びつけやすくなることが分かっています。

「ご!」と言われたら、「りんご(指さし)だね、もぐもぐ(食べる真似)、美味しいね」と、体全体でコミュニケーションを楽しんでみてください。

 
「質問攻め」はお休みして、大人が代弁する
 ことばを早く覚えてほしいあまり、つい「これ何?」「なんて言うの?」と子どもに質問ばかりしてしまうことはありませんか? 実は、まだ言葉が十分に外に出ない時期の「質問攻め」は、子どもにとってプレッシャー(テストをされているような感覚)になり、話すことが負担になってしまうことがあります。

 この時期は、質問するよりも、大人が子どもの気持ちを「実況中継」してあげる方が、言葉が育ちやすいとされています。

  ×「これ何?りんごでしょ?言ってみて?」
 ◯「あ、りんご見つけたんだね。食べたくなっちゃったね」

子どもが心の中で思っているであろうことを大人が代わりに言葉にしてあげることで、「自分の気持ちを表現する言葉」が子どもの中にストックされていきます。

 
おわりに ― 毎日の会話の中に「楽しい!」の種をまこう ―
子どものことばを育てる一番のエネルギーは、高級な教材でも特別な訓練でもありません。「大好きなママやパパに、自分の気持ちが伝わって嬉しい!」という安心感とワクワク感です。

 語尾だけのおしゃべりは、いましか見られない愛おしい成長の一コマです。 「ちゃんと言わせなきゃ」という肩の荷を一度おろして、「伝わったね!」の喜びを、お子さまと一緒にたくさん積み重ねていってくださいね。

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