
― 子どもが安心して過ごすための、大切なサイン ―
「同じ服しか着たがらない」「順番が少し違っただけで激しく嫌がる」「同じ質問を何度も繰り返す」――そんなお子さまの姿に、戸惑ったり、心配になったりすることはありませんか。
「わがままなのかな」「このままでいいのかな」と感じる気持ちは、とても自然なことです。
しかし現在の発達支援や発達心理学では、こうした行動は「困らせるためのもの」ではなく、子ども自身が安心して過ごすための大切な工夫と考えられています。
特に自閉スペクトラム症(ASD)では、「同じであること」を求める行動や、繰り返しの行動が見られることがあります。それは単なる“癖”ではなく、不安を減らし、自分を落ち着かせようとする姿でもあるのです。
「いつも通り」が、お子さまの心のよりどころ
発達に特性のある子どもたちは、私たちが想像する以上に、日常の中で不安を感じやすいことがあります。「次に何が起こるか分からない」「急に変わってしまう」という状況は、大人が思う以上に大きな負担になっているのです。
そんな中で、「いつも同じ順番」「いつも同じもの」という"こだわり"は、お子さまが自分なりに世界を安心できるものにしようとする工夫です。繰り返しの質問も「これで合ってる?大丈夫?」という確認であることが多く、不安を和らげるための大切な手段のひとつです。
自分を落ち着かせるための行動
くるくる回ったり、同じ動きを繰り返したりするのはなぜ?
ASDの子どもたちは、音・光・触感などの感覚に「とても敏感」だったり、逆に「強い刺激をもとめる」傾向があったりすることがあります。
くるくる回る、同じ動きを繰り返す、特定のものに強く惹かれるといった行動は、自分の感覚を落ち着かせたり、内側のバランスを整えたりするための行動であることが研究でも示されています。"困った行動"に見えても、じつはお子さまが自分なりに一生懸命、自分を整えようとしている姿なのです。
考え方のスタイルの違い
一度決めたことを変えられないのはなぜ?
ASDの子どもは、細かいところに気づきやすい一方で、状況に応じて柔軟に切り替えることが難しい場合があります。「一度こうと決めたら変えられない」「例外への対応が苦手」という姿も、その子の情報処理のスタイルからくるものです。
意地を張っているわけでも、ルールを守りたいだけでもなく、「変化そのものが、その子にとってとても大きな負荷」になっていることがあります。
関わり方のヒント
大切なのは「やめさせる」より「支える」こと
こだわりを無理になくそうとすると、お子さまの安心の拠り所を奪うことになってしまいます。今の支援の考え方では、まず「こだわりを支えながら、少しずつ広げる」ことが基本です。
「見通し」を伝える
「次は○○するよ」と事前に教えてあげたり、絵カードや写真を使って予定を見えるようにしたりすると、不安がずっと小さくなります。
スモールステップで少しずつ、今のこだわりを土台にして、ほんの少しだけ変化を加えてみましょう。大きく変えようとしなくて大丈夫です。
強みとして見る
こだわりは、集中力・継続力・探究心といった力にもつながります。その子だけの「すごいところ」として育てる視点も大切です。
お子さまの"こだわり"は、「困らせようとしている」のではなく、「自分なりに精一杯、世界と向き合っているサイン」です。
その行動の背景にある不安や感覚の特性に気づいたとき、関わり方はきっと変わってきます。大切なのは、お子さまが「ここは安心できる」と感じられる場所をつくること。その積み重ねが、少しずつ新しい挑戦へとつながっていきます。
"こだわり"は、その子が一生懸命に生きている証。そう捉え直すことから、支援は始まります。








