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2026-04-07
お役立ちコラム

指示が入らない子どもの“見えない困りごと”と支援の視点

「何度言っても伝わらない…」は理由がある

「聞かない子」ではなく「聞けない状態」を理解する
 「どうして何度言っても聞いてくれないのだろう」
子育ての中で、多くの保護者の方が一度は感じる疑問です。しかし、発達に課題のあるお子さまの場合、この行動は単なる反抗やわがままではなく、「聞くための準備が整っていない状態」であることが少なくありません。
 まずは「聞かない」のではなく、「聞くことが難しい状況にあるのかもしれない」という視点を持つことが、適切な関わりへの第一歩となります。

 注意が続かないと、指示は「届かない」
 お子さまの中には、周囲の刺激に注意が向きやすく、一つの情報に集中し続けることが難しい特性があります。
 例えば、公園や外出先などでは、音や動き、人の存在など、さまざまな刺激が同時に入ってきます。その中で大人の声だけに注意を向けることは、実はとても高度な力を必要とします。
 そのため、指示を出していても「聞こえていない」「途中までしか理解できていない」といった状態が起こりやすくなります。

 「分かっているのにできない」の正体
 「さっき説明したのにできない」「分かっているはずなのに動けない」
 このような場面には、実行機能の特性が関係しています。
 行動をコントロールする力が未熟な場合、頭では理解していても、衝動的な行動が優先されてしまうことがあります。また、複数の指示を一時的に覚えておくことが難しく、途中で抜けてしまうこともあります。
 さらに、「次に何をするのか」という見通しを持つことが難しいと、行動に移るきっかけ自体がつかめず、結果として「動けない」状態になります。

 言葉だけでは伝わらないことがある
 言葉の理解があっても、「意図」や「重要性」が伝わらないことがあります。
 例えば、声のトーンや表情、状況の流れといった非言語的な情報を読み取ることが難しい場合、大人がどれほど真剣に伝えていても、そのニュアンスが十分に届かないことがあります。
 また、「ちゃんとして」「ちゃんと片付けて」といった抽象的な表現は、お子さまにとっては具体的な行動に結びつきにくく、混乱の原因になることもあります。

 環境の「しんどさ」が行動に影響する
 実は、環境そのものが負担になっている場合も少なくありません。
 音や光、人の多さに敏感なお子さまにとって、外出先は情報があふれる「とても疲れる場所」になります。そのような状態では、指示を聞く余裕がなくなってしまうのです。一方で、感覚の感じ方が鈍い場合には、危険への気づきが遅れ、結果として指示と行動が一致しにくくなることもあります。

 「こうすれば伝わる」具体的な関わり方
 では、どのように関わればよいのでしょうか。
 例えば、公園で遊んでいるお子さまに「帰るよ」と声をかけても動けない場合、繰り返し注意するだけでは効果は高くありません。
 そのようなときは、お子さまの近くに行き、目線を合わせてから、「あと3回すべり台をしたら帰ろう」と具体的に伝えます。さらに、指で回数を示しながら、「終わったら靴をはこうね」と次の行動まで示します。
 そして実際にできたときには、「今、自分で終われたね」としっかり認めることが大切です。
 このように、指示を短く分かりやすい言葉で伝えながら、お子さまが具体的に行動を思い描けるようにし、さらに次の流れまで見通しをそっと示していくことで、気持ちは少しずつ落ち着き、安心して一歩を踏み出すことができるようになります。
 一つひとつは小さな関わりですが、その積み重ねが、「分かる」「できる」という実感となり、お子さま自身の力へと静かに育っていくのです。

 「叱る前に整える」という支援の考え方
 こうした関わりは、応用行動分析(ABA)の考え方とも一致しています。
 行動は、その子の性格や意思だけで決まるものではなく、「どのような環境で、どのように伝えられたか」に大きく影響されます。
 そのため、「どうしてできないのか」と叱る前に、「どうすればできる環境になるか」を整えることが、支援の基本となります。

 「できた経験」が子どもを変えていく
 指示を聞く力は、練習や経験の中で少しずつ育っていくものです。
 お子さまに合った関わり方を続けることで、「聞けた」「できた」という成功体験が積み重なり、それが自信や安心感へとつながっていきます。
 そしてその積み重ねが、やがて自分から行動できる力へと育っていきます。
 「どうしてできないのか」ではなく、「どうすればできるのか」。その視点の転換が、お子さまの可能性を大きく広げていくのです。

 

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